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レース直前の脳しんとう

2月に入ってバンクーバーにはこの冬一番の寒気が流れ込んできました。
月曜日、朝起きたらダウンタウンもうっすら雪に被われて、気温は氷点下。
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天気予報を確認したら、レース日の朝の気温も0℃前後みたい。
ウィニペグにいた時は-20℃でもジョギングしていた私だけど、
かれこれ1年以上氷点下の気温では走っていません。
「ちょうどいいや、寒い中のランニングがどんなだったか思い出してこよう。」と
元気よく家を出たのは午前8時半頃。
日曜日のハーフマラソンスタート時刻に出発を合わせました。

ウォームアップとして、ゆっくり走り出すと冷たい空気が肺に入っていく
感じもなく、思ったより寒く感じず少し安心。
1マイル(1.6km)走った時点で立ち止まり、iPhoneのランニングアプリ
(アプリの方がガーミンより距離の文字が大きくて見やすいので)を起動しました。
その日のメニューは

  • 800メートル (10Kペース) 2分の休憩を挟んで3本に続き
  • 800メートル (5Kペース) 400メートルのスロージョグを挟んで3本

テーパリングに入り、トレーニングの質量を落としているので足に刺激を入れるためのインターバル。
フルマラソンの時もレースの4、5日前に行っているトレーニングです。

さて、行くか。

iPhoneを左手に握り、走り出す。ガーミン(GPS腕時計)を見るとペースは予定より遅いけれど、路上には雪もあるし、転んだら大変なので無理にスピードは上げずに走り続ける。途中アプリで距離を確認すると、まだ400メートル。いつものことながら速く走るのは楽じゃない。

800メートル!

ガーミンを止め、時刻を確認すると8時45分、ということは47分まで休憩だ。アプリも一時停止した。「なんだか鼻が詰まっている感じだな、ティッシュ持ってくるの忘れちゃった。」と思いながら、頭を上げ近くの手すりにつかまって大きく息をついた。すると今まで経験したことのない感覚に襲われた。頭の中がぐるぐる回っているみたい。何だこれ?

ふと音が聞こえてきました。ラジオの音みたい。半分夢の中にいる気分で
ふと目を開けると、そこには2匹の犬(たぶんレイクランドテリア)を連れ、
赤い帽子を被った女性が「大丈夫?」と声をかけてくれていました。
立ち上がろうとしたけれど頭がクラクラして立ち上がれません。
「誰かに電話して迎えに来てもらうことはできる?」そう言われて、
見てみると足元から30㎝ほど離れた場所にiPhoneが落ちていました。
すぐにグゥに電話し、居場所を教え、来るように伝えます。
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倒れた現場
iPhoneを水の中に落とさなくて良かった!

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お世話になったベンチ


グゥを待っている間、帽子の女性はしゃがみこんで、ずっとおしゃべりを
続けてくれました。

「最初、音が聞こえて何だろうと思って見たら、あなたが倒れていたのよ。」
「脳しんとうを起こしたのね。」
 (私)「冷たい空気を吸い込んだのが、いけなかったのかも」
「寒いからね」
 (私)「でも私ウィニペグ出身だから」
「私もウィニペグで育ったのよ。」

彼女はグゥが来るまで、付き添ってくれるつもりだったのだけど、
散歩せずに立ち止まっているせいで犬が震え始めていることに気づきました。
「こんなに寒くなると思わなかったから、ヘアカットしたばかりなのよね。」
飼い主が私の相手をしてくれていた間、じっと待っていてくれた犬は、
手を伸ばして背中を撫でてあげると近くにやってきてくれました。
「帰り道に、ここに寄ってあなたがいなくなっているか確認するからね。」
そう言い残して彼女は去っていきました。

いつか再会して、ちゃんとお礼が言いたいな。(*追記参照)
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犬たちにも再会できました!


まもなくしてグゥが到着しました。赤い帽子はまだ私の視界の中にありました。

近くのベンチに移動すると、グゥが「今日、何曜日だかわかる?」と聞いて
きました。
「月曜日」と答えると、脳しんとうを起こすと記憶を失ったり、
即答できなかったりすることがあるので、その確認だと。
私が家まで歩いて帰るのは到底無理だと察したグゥは、車を取りに家に
戻り、その間私は座っているのも辛く、ベンチに横になって待っていました。
10分ほどして車で戻ってきたグゥと帰宅。
着替えることもなく、ベッドに直行しました。

頭痛と吐き気と耳鳴りがひどく、しばらく苦しんだ後、眠りに落ちました。
20時間以上眠り続けました。

******

後で発信記録を確認したら、グゥに電話をしたのは8時50分。
5分間のできごとでした。
骨折も目立った外傷もなかったのは不幸中の幸い。
赤い帽子の女性が即座に私を見つけて、声をかけてくれなかったら、
氷点下の路上で意識を失っていた私はどうなっていたんだろうと思うと、
ぞっとします。本当に彼女には感謝の気持ちしかありません。

追記
なんと、ジョギングを再開して3日目に「赤い帽子の女性」オードリーさんと
再会し、ちゃんとお礼を言うことができました。


by celeste98 | 2019-02-10 14:56 | Running | Comments(0)
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